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「お姉ちゃん、始まるよ」
母が居間から呼んでいる。
アメリカ合衆国第44代大統領
バラク・オバマさんの就任式が、
もうすぐ始まるのだ。
「史子、歴史だぞ。始まるぞ」
父が、部屋の前までやってきて
わたしを呼ぶ。
「今いくよう」
わたしは、読みかけている
『オーデュボンの祈り』を閉じて、
ベッドから立ち上がった。
部屋から出ようとすると、
扉の前に鏡があって、
寝巻き姿でスッピンの
30代のわたしが映る。
こんなところに
鏡なんかかけなきゃよかった。
ふと、そう思う。
オバマには、わたしもドキドキする。
でもそれは「アメリカの話」だ。
こんなリーダーが、
この国に欲しいと強く思う。
でも無理だと、強く感じている。
この国にいる自分が
恥ずかしくなる。
テレビの前に、年老いた両親。
「未来が映るかもしれないねえ」
母と父が、楽しそうに妹の話をしていた。
未来は3年前からアメリカにいる。
そして今年、結婚するそうだ。
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